山口大学は、群馬県の茂倉沢鉱山からレアアースを含む4種の新鉱物を発見したと発表しました。これらは「赤坂簾石」グループに属する暗褐色の結晶で、セリウムやランタンを豊富に含みます。2024年から25年にかけて国際機関に承認され、研究成果は専門誌に掲載されました。
レアアースって何?
レアアース(希土類)とは、スカンジウム、イットリウム、およびランタンからルテチウムまでの合計17元素の総称です。 「希土類」という名の通り、かつては分離・抽出が難しく希少だったことからこう呼ばれます。地殻中の含有量そのものは極端に少なくないものもありますが、採算の取れる濃度の鉱床が偏っているのが特徴です。
どんな用途があるの?
「現代産業のビタミン」とも呼ばれ、ごく少量を添加するだけで製品の性能を劇的に向上させます。
- 強力な磁石: ネオジム磁石(電気自動車のモーターや風力発電機)
- 光学材料: カメラのレンズ、研磨剤
- 発光体: 液晶ディスプレイ、LED
- 触媒: 石油の精製、自動車の排ガス浄化
チャイナリスクとの関連は?
現在、世界のレアアース生産量の大部分を中国が占めています。過去には尖閣諸島周辺での問題に関連し、中国が日本への輸出を制限したことで価格が高騰し、日本の製造業が混乱に陥る事案が発生しました。 特定の国に供給を依存することは、外交・政治的な圧力によって供給が止まるリスク(チャイナリスク)を常に孕んでおり、調達先の多角化が急務となっています。
今後、日本がレアアース大国になる可能性
今回のような新鉱物の発見に加え、近年では南鳥島沖の海底に膨大な量の「レアアース泥」が存在することが判明しています。 これらを効率よく採掘・精製する技術が確立されれば、日本は輸入国から資源国へと転じる可能性を秘めています。今回の山口大学の発見も、国内の資源分布を知る上で重要な学術的ステップとなります。
まとめ
レアアースはハイテク製品に不可欠な戦略物資であり、その供給を特定の国に頼ることは安全保障上の懸念事項です。国内での新鉱物発見や海底資源の調査が進むことは、日本の産業競争力を守り、「資源自給」という長年の悲願を達成するための大きな希望といえます。
参考:南鳥島のレアアース泥について
南鳥島の「レアアース泥」開発は、現在まさに歴史的な転換点にあります。2026年1月現在、ついに世界初となる深海からの大規模な引き揚げ試験が始まっています。
最新の進捗状況を5つのポイントでまとめました。
1. ついに「試験掘削」がスタート(2026年1月〜)
海洋研究開発機構(JAMSTEC)の地球深部探査船「ちきゅう」が、2026年1月中旬に静岡県の清水港を出港しました。現在、南鳥島沖の海域で、水深約6,000mの海底からレアアース泥を回収する試験を行っています。
2. 世界初の技術「サブシープロダクションシステム」
深海6,000m(富士山の約1.6倍の深さ)から泥を効率よく引き揚げるのは至難の業です。
- 仕組み: 海底に設置した採鉱機で泥を海水と混ぜて液体状(スラリー)にし、長いポンプ(揚泥管)を通して船上まで吸い上げます。
- 難易度: この深さでの連続的な引き揚げに成功すれば、世界初の快挙となります。
3. なぜ南鳥島なのか?(魚の骨の恵み)
最新の研究で、このレアアース泥の正体が「数千万年前の魚の骨」であることが分かってきました。 当時の地球寒冷化に伴う海流の変化で、魚が大量に集まるエリアができ、その死骸(骨)が海中のレアアースをスポンジのように吸収して堆積したものです。そのため、南鳥島周辺には「世界需要の数百年分」とも言われる超高濃度の泥が眠っています。
4. 今後のスケジュール:2027年に大規模試験
今回の2026年の試験でシステムの安全性を確認した後、以下のステップが予定されています。
- 2027年2月: 1日あたり350トンという、より商業化に近い規模での回収能力を実証する試験を実施。
- 2020年代後半以降: 民間企業への技術移転と、本格的な商業生産に向けた採算性の検証。
5. 直面している課題
- コスト: 陸上の鉱山に比べ、深海からの引き揚げには膨大なエネルギーとコストがかかります。
- 環境保護: 海底の泥を巻き上げることによる深海生態系への影響を最小限に抑える技術(環境モニタリング)が同時に研究されています。
まとめ: 現在は「夢の技術を現実にするための最終チェック段階」にあります。これが成功すれば、日本はレアアースを100%輸入に頼る国から、世界有数の資源保有国へと一歩近づくことになります。


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